研究概要 |
我々はこれまで、抗癌剤であるCycolphosphamide(CP)をもちいたマウスにおける薬剤誘導性免疫寛容系について考案研究しその成果を報告してきた。このCP誘導性免疫寛容系はキメラ状態を誘導することによりドナー抗原に免疫学的寛容状態を誘導する方法であり、系自体が単純であり再現性にすぐれている。さらに、我々はその成果をこれまで英文論文で40報以上報告してきた。この寛容系の原則は、抗原として同種脾細胞を用い経静脈投与(Day0)後、200mg/kg(LD50)のCPをDay 2)に投与することにより抗原特異的寛容状態が誘導されるというものである。この実験系は、MHC抗原は一致しマイナー抗原のみ違う組み合わせでは皮膚移植片寛容状態とキメラ状態が誘導される(1984,Transplantation)が、MHC抗原の違う組み合わせでは一時的キメラ状態と中等度皮膚片生着延長が誘導される(1985,Transplantation)。また本寛容系により誘導されるキメラ状態はリンパ球レベルのみであり骨髄レベルではないことが今回の実験結果により分かった。(Yoshikawa, Tomitaetal.,Submittedforpublication)。さらに骨髄レベルのキメラ状態を作成するために200mg/kgCPに加えより骨髄抑制効果のより強力な25mg/kgのBusulfan(BU;致死量250mg/kg)をDay2に投与した翌日(Day3)にDonor骨髄細胞を投与した.このConditioningの追加により永久的な混合キメラ状態と皮膚移植片に対する寛容状態をMHC抗原の壁をこえて薬剤誘導性免疫寛容系で始めて誘導できた(Yoshikawa,Tomitaetal.,Manuscriptinpreparation)。さらにこの結果に基き、骨髄抑制作用のより強いBusulfan(BU;致死量250mg/kg)+Donor骨髄細胞をCP誘導性免疫寛容に加えることにより、MHC抗原の違うB10.D2(H-2^d)→B10(H-2^b)において永久的なキメラ状態と皮膚片に対する寛容状態を誘導することが可能となった(Yoshikawa,Manuscriptinpreparation).つまり、皮膚片に対する寛容状態を誘導可能な最低限のCP及びBUの量に対する検討が必要なものの、大動物に応用可能な実験系を確立することが出来た。今後、さらにこの実験系を応用、発展させ、大動物における免疫寛容誘導系を確率していく予定である。
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