研究概要 |
本研究は,中枢神経系の再生に抑制的に作用する,テネイシン陽性アストログリアを選択的に破壊して,再生に促進的に働くテネイシン陰性アストログリアのみを選別し,脳内に移植して損傷を受けた中枢神経系再生促進手段の開発を目指している.その第一段階として,まず幼若アストログリアにおけるテネイシン遺伝子のプロモーター領域を決定する. すでに報告されているマウステネイシン遺伝子の配列を元に,2領域の遺伝子断片(約600bp)をプローブとして,マウスジェノミックライブラリーをスクリーニングした.その結果,マウステネイシン遺伝子の5'-上流領域,約4.2kb(-4028から+243まで)を得た. マウス幼若アストログリアの初代培養系において,マウステネイシン遺伝子の十分な転写活性を持つプロモーター領域を見出すために,8種類の長さの異なる上流領域の欠失変異体を作成した.各上流断片の下流に,レポーター遺伝子としてホタルルシフェラーゼ遺伝子をつなぎ,幼若アストログリア初代培養系へ導入した.その結果,-3009から+243までの領域にアストログリア特異的な発現調節領域が含まれていることを見出した.一方,同じ8種類のコンストラクトを,マウス繊維芽細胞であるNIH3T3に導入した場合には,より短い領域で十分な転写活性が認められた.このことから,アストログリア特異的な転写調節には繊維芽細胞とは異なる領域がさらに必要であり,より複雑な発現制御が行われていることが明らかとなった.このような,幼若アストログリアの初代培養系におけるテネイシン遺伝子の転写調節領域の解析は,今回我々によって初めて見出された知見である. 今後,このプロモーター領域の下流に,細胞破壊性遺伝子をつなぎ,幼若アストログリアの初代培養系において,テネイシン陽性細胞を選択的に破壊して,テネイシン陰性のアストログリアを選別することを検討して行きたい.
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