研究概要 |
本年度の研究では、カルデスモンのチロシン・リン酸化をはじめ、攣縮脳血管の細胞内チロシン・キナーゼ系の情報伝達の亢進について報告する。脳血管攣縮モデルで作製された成犬攣縮脳血管のShc,Raf1,ERKを含む細胞内チロシン・キナーゼ基質の活性化が脳血管攣縮の初期に頂点に達し、晩期には軽度の低下が観察された。Shcの活性化はチロシン・キナーゼ受容器、Gタンパク共軛受容器よりの情報伝達の刺激によると考えられる。さらに、チロシン・キナーゼ阻害剤であるゲニスタインの局所投与により、細胞内チロシン・キナーゼ基質のリン酸化が減少するのみでなく、プロテイン・キナーゼMの発生がみられなくなり脳血管攣縮が緩解されることより、チロシン・キナーゼ系の活性化と細胞内Ca濃度上昇が密接に関連していることが示唆される。攣縮脳血管のカルボニンは減少しセリン・スレオニン・リン酸化され、攣縮脳血管平滑筋の収縮性が亢進していることを平成6年度〜平成8年度基盤研究B(研究課題番号06454424)で報告したが、カルボニンは脳血管攣縮時チロシン・リン酸化される。血管平滑筋細胞内チロシン・キナーゼ情報伝達系の亢進と血管攣縮との関係をさらに追究する必要がある。
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