研究概要 |
関節炎が膝前十字靭帯の力学的特性に及ぼす影響 【目的】 コラーゲン関節炎ラットを作成し、関節炎が靭帯の力学的特性に影響を及ぼすか否かを検討した。 【対象】 実験動物はSD系雌ラット(実験開始時8週齢)とした。対照群(C群:n=10)と、ウシ2型コラーゲンを用いて感作した関節炎群(CIA群:n=10)の2群を作成した。 【方法】 1)関節炎の評価:感作より2週ごとに関節点数(Wood,1977)を計測した。2)骨密度測定:pQCTを用いて、感作より2週ごとに脛骨近位骨幹端部と骨幹部を計測した。3)力学試験:感作後10週で屠殺し右肢を用いて大腿骨・前十字靭帯・脛骨ユニットを作成し、万能試験機を用いて引っ張り試験を行い前十字靭帯の力学的特性を両群間で比較検討した。4)組織学的検討:左肢を用いて脱灰標本を作成し両群で比較した。 【結果】 1)関節炎:CIA群では関節炎は感作後2週で発症し、関節点数は4週で平均5点であった。2)骨密度:C群の骨密度は経過中徐々に増加した。一方、CIA群では、海綿骨密度は関節炎発症時の2週よりC群と比較して有意に減少し、4週では初期値の77%となり以後一定の値となった。皮質骨密度は8週時にC群が53%増加していたのに対し、CIA群では25.8%の増加であった。3)力学試験:C群、CIA群とも全検体が前十字靭帯の大腿骨付着部で破断していた。最大破断強度はC群で平均26.7N、CIA群で20.0NでありCIA群が有意に低値を示した(p=0.0415)。StiffnesはC群で平均41.3N/mm、CIA群で25.6N/mmでありCIA群が有意に低値を示した(P=0.0356)。4)組織学的検討:現在標本作成中。 【考察】 関節炎により膝前十字靭帯の力学的強度に劣化が生じることが示唆された。今後、組織学的な検討を加えこの劣化が靭帯実質部に生じたものか、あるいはbone-tendon juncutionに生じたものかを解明する必要がある。
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