研究概要 |
【目的】外傷などによる末梢神経欠損例で直接縫合が不可能な場合は自家神経移植術が行われている。しかし、自家神経移植術では縫合部が2カ所となり縫合部の瘢痕組織により再生神経の伸長が阻害されるため、神経欠損のない縫合例に比べて機能回復は劣る。神経欠損例でも関節屈曲により神経の緊張を弱め神経縫合を行い、術後徐々に関節を伸展することにより縫合した神経を延長することができれば強い緊張下での神経縫合や、神経移植を行った場合に比べて、優れた治療成績を得られる可能性がある。H9年度には6mm神経欠損モデルを作製し、関節屈曲により神経断端間の緊張をとり神経外膜縫合を行い2週後より関節を緩徐に伸展した神経延長群と強い緊張下に神経外膜縫合を行った縫合群及び神経移植群の機能回復をTFI(Tibial Functional Index)を用いて比較検討し、延長群と移植群の回復は同程度で縫合群に比べて有意に良好な結果を得た。本年度、8mm及び10mm神経欠損モデルでTFIを用いて3群の機能回復を比較検討した。 【方法】体重約350gの雄Wistar系ラット49匹を用いた。左坐骨神経から脛骨神経への分岐部より1mm遠位から8mm及び10mm切除した神経欠損モデルで、膝関節を130゚屈曲位で外固定し縫合2週後より5゚/日ずつ12日間伸展した延長群、緊張下に神経外膜縫合を行い外固定を行わなかった縫合群、切除した神経片を用いた移植群を作製した。各群において術前及び術後2,4,8,12,16,24,36週に歩行解析を行いTFIを算出し、t-検定を用いて比較した。 【結果】延長群は縫合群に比べて8mm神経欠損モデルでは術後24、36週、10mm神経欠損モデルでは術後8,12,36週で有意に良好な回復を示した(p<0.05)。移植群と延長群間にはすべての週で有意差を認めなかった。
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