近年、集中治療医学の進歩により、多臓器不全から回復後に重度の肝障害が継続する症例が増加している。肝障害によるビリルビン濃度の上昇を抑制するため、血漿交換や体外循環によるビリルビン吸着が行われるが、感染症や費用の問題があり、適応は限られている。一方、新生児の高ビリルビン血症では光線療法(緑色光)によりビリルビンの脂溶性を低下させ、肝臓や腎臓からの排泄を促進することができる。しかし成人では体重あたりの体表面積が少ないため光線療法は行われていない。本実験は体外循環中の限外濾過カラムを緑色光で照射し、血中ビリルビンの脂溶性を低下させビリルビンを限外濾過することを目的としている。前年度は、自然状態のビリルビンと血液をカラム内内に灌流する事で、少量のビリルビンがカラム外に限外濾過されることを吸光光度の上昇により確認した。加えて、カラムに光を照射することによりビリルビンの限外濾過量が増加することを観察した。本年度は臨床で持続血液濾過透析に用いられている濾過膜(旭メディカル社製パンフ口ーAPFO6S)を用いて、緑色光を照射しない状態でも水溶性のビリルビンが限外濾過されうることを確認した。しかし濾過量は少量で、臨床上ビリルビン値を低下させるには至っていない。ビリルビンは生体内で長時間存在するとアルブミンと共有結合し、分子量の大きさから限外濾過が不可能となる。今後、ビリルビンとアルブミン間の共有結合に対し、緑色光がどのような作用を有するか調べることが必要であると考えている。
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