研究概要 |
イヌを対象とした動物実験により生体内内圧測定について基礎的な検討を行った。麻酔下の状態で開腹し,膀胱頂部からカーボンファイバーフェルト圧素子を膀胱内に挿入し,ブリッジ回路を経て,イヌの体外に置いたテレメータシステム送信機に連結し,そのテレメータシステム送信機からさらにテレメータシステム受信機に圧信号をケーブルによる連結をしない状態で送信することにより,イヌと記録器械との連結をしない状態で膀胱内圧を測定した。同時に尿道内から圧測定用カテーテルを膀胱内に留置し,トランスデューサーおよび記録器械に連結し,記録器械に拘束する通常の方法でも膀胱内圧を測定した。生理的食塩水を逆行性に膀胱内に注入し蓄尿時,膀胱内圧上昇時および排尿時におけるカーボンファイバーフェルト圧素子およびテレメータシステムによる測定と通常の方法である圧測定用カテーテルによる測定とを比較することにより測定システムの実用性を評価した。 その結果,両者の測定値は蓄尿時においてほとんど同じ値であった。また,膀胱内圧上昇時および排尿時における律動的な膀胱内圧の変動がいずれの測定法によっても,明瞭に捉えられた。今後,カーボンファイバーフェルト圧素子はカテーテルに取り付けるなど,その形状をさまざまに加工することができる点で応用が可能であり,テレメータシステムも一層の小型化が可能である。カーボンファイバーフェルト圧素子およびテレメータシステムによる被験者を記録器械に拘束せずに,膀胱内圧を測定する手法は,より生理的な膀胱機能を把握する上で,臨床的に意義の高いものになることが期待される。
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