研究概要 |
視神経萎縮症は眼科領域における神経変性疾患(neurodegenerative disease)であり現在まで有効な治療法は確立されていない。われわれはこうした眼科領域での最難治の神経変性疾患群の病態の解明に照準を当て,数年前より独自の方法論で研究を行ってきた。これまでわれわれは,電気生理学的検査・高速スピンエコーMRI法をもちいて視神経疾患の病態を追究してきた(Imamura et al.,J Neuro Neurosurg Psychiatry 1996,Mashima et al.,Arch Ophthalmol 1997,Mashima et al.,Eye 1997ほか)。次にわれわれは難治性の視神経疾患の分子的基盤を明らかとするためヒト網膜より疾患関連遺伝子群の単離を試みた。われわれはこれまで同定された網膜変性疾患の責任遺伝子の大半が組織に特異的に発現することに注目し,ヒト網膜cDNAライブラリーよりサブトラクション法を用いて網膜に特異的に発現するcDNAを単離した。われわれは得られた完全長cDNAの塩基配列,アミノ酸配列から機能を推測し,この遺伝子産物を網膜特異的アミンオキシダーゼ(RAO;retina-specific amine oxidase,遺伝子シンボル;AOC2)と命名した。われわれは,これまでにRAOが生体アミンの代謝酵素である銅依存性アミンオキシダーゼ(E.C.1.4.3.6)群と高い塩基配列およびアミノ酸配列の相同性を認め,E.C.1.4.3.6の活性部位であるAsp-Tyr-Asn-Tyrと銅付着部位の3ヶ所のヒスチジン残基が存在することを示した。さらにRAOは成人および胎児27臓器で網膜にのみ発現がみとめられ,またRAO遺伝子(AOC2)はヒト染色体17q21にマップされた(Imamura et al,Genomics 1997)。AOC2を含むヒトBACクローンの解析から,AOC2のエキソン・イントロン構造および推定されるプロモーター領域を決定した。またマウス網膜においてRAOのmRNAは網膜視神経節細胞層に優先的な発現を認めることを示した(Imamura et al,Genomics 1998)。
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