研究概要 |
口腔内における修復物の辺縁漏洩は,適切な臨床診査法が確立されていないため,術者によって診断結果に大きな違いが認められる.そこで本研究では,修復物辺縁と周囲の歯質との構造的な違いが電気的性質の差として相対的に検出されうる可能性に着目し,コンダクタンス測定による辺縁封鎖性の電気的評価を試みた.すなわち,技去歯に市販コンポジットレジンにて修復処置を施し,修復物辺縁とその前後におけるコンダクタンス値を連続的に測定した.その際,象牙質接着システムの使用の有無や,測定周波数と測定電圧の変化が,コンダクタンス値に及ぼす影響を検討した.また,使用電極としては,測定面での接触状態を可及的に均一化するために,暖圧機構を備えた電極を試作した.辺縁封鎖度が低い接着システム不使用群では,封鎖度が高い接着システム使用群と比較して,歯冠部窩洞および根面窩洞とも,コンダクタンス値の変化量が有意に大きくなった.測定周波数および測定電圧の変化は,接着システム不使用群におけるコンダクタンス値の変化量に有意な影響を与えなかった.また,測定周波数と測定電圧が共に低い場合,測定誤差が増大したが,周波数を高く設定することで,被験者に不快感を与えない低電圧での測定が可能であった.以上のことから,コンダクタンス測定による辺縁封鎖性の相対的評価法は,in vitroにおけるコンポジットレジン修復において,歯冠部窩洞および根面窩洞とも辺縁漏洩の検出が可能であることが示された.また,その簡便性からも,本測定法の臨床応用の可能性が示唆された.
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