研究概要 |
中空形総状粉体は中実形球状粉体に比べて,軽量化,耐衝撃性,熱膨張性,薬剤の充填,硬化収縮・熱収縮・残留応力の軽減などの機能を付与する利点がある.中空形球状粉体の中で,Expancel 641DE(日本フェライト)は比較的低温の水の沸点近傍で熱膨脹性を有する.この温度は加熱重合型床用レジンの加熱温度あるいは重合熱の発生によって到達する温度である. 本研究は加熱重合型床用レジンの粉剤へExpance 1641DEを配合して,成形・硬化過程における硬化収縮,熱収縮を補償し,成形・硬化過程の残留応力を軽減することによって,有床義歯の成形精度および適合性の向上を図ることにある.本目的を達成するために,次の観点から加熱重合型床用レジンの粉剤へのExpance 1641DEの効果を解明した. 1. Expance 1641DEの配合が加熱重合型床用レジンの力学的性質に及ぼす影響 その無添加の加熱重合型床用レジンに比べて,曲げ強さおよび曲げたわみは粉剤への添加量20%,曲げ弾性係数および曲げ剛性は15%,破壊靭性値は5%を最大値として有意に低下した. 2. Expance 1641DEの配合が加熱重合型床用レジンの成形精度,適合性に及ぼす影響 板状試験片(標点開距離50mm)および鞍形試験片による成形精度,適合性はその無添加の加熱重合型床用レジンに比べて,向上したことが確認された.しかし,Expance 1641DEは粉体相互の凝集性が高く,如何に床用レジン中に均一に分散するかの問題が未解決である. 3. Expance 1641DEの配合が加熱重合型床用レジンの残留応力に及ぼす影響 ひずみゲージ・リング埋め込み法(越智ら,高分子論文45,817,1988)によって成形・硬化過程の内部応力および成形・硬化後の残留応力の計測を試みたが,ひずみゲージの加熱時の温度補償問題が解決できなかった.
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