研究概要 |
放射線照射による顎骨障害の程度を近赤外分光法によって捉えることを目的として、下顎骨に^<60>Coδ0Gy 1回照射を行った家兎を用いて照射後1,5,9.12か月目の下顎骨内における酸素濃度の変化ならびに正常家兎の下顎骨内酸素濃度変化を計測した。計測には、ハロゲンランプを光源とする4波長生体分光計測装置を用い、人工呼吸下に吸入酸素濃度を変化させるという条件下と両側総頚動脈を一時的に閉塞するという条件下で行った。計測波長として、700nm,730nm,および750nmを用い、酸素化ヘモグロビン量([HbO_2]),脱酸素化ヘモグロビン量([Hb]),全ヘモグロビン量(total[Hb])を計測した。本計測結果を組織学的検索と併せて評価検討した。 1. FiO_2を21%から0%に変化させることによって、[HbO_2]と[Hb]の変化量の低下から顎骨内血液量の減少を把握することができた。 2. 両側総頚動脈を一時的に閉塞させることによって、[HbO_2]の変化量の低下から酸素利用の低下すなわち酸素消費の障害を把握することができた。 3. 顎骨に放射線を照射することにより、顎骨内における酸素消費量および血液量の両者が放射線照射時から経時的に減少することが明らかとなった。 3. 組織学的検索から顎骨内に分布する血管数の経時的減少が認められた。 顎骨における放射線障害は、放射線により骨細胞の活性低下と局所の循環障害によって慢性的な低酸素環境が生じるためとされている。よって、今回の結果から近赤外分光法を用いて顎骨内酸素濃度を計測することにより、放射線照射による顎骨組織および微小循環系の障害の程度をモニタリングすることができる可能性が強く示唆された。
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