研究概要 |
本年度も口腔癌免疫療法の基盤となる諸種の研究を行った。下顎歯肉癌については、いわゆる下顎管分類を用いてT分類を行い、骨浸潤様式を併せて考慮すると、下顎辺縁切除か下顎区域切除以上かの治療法選択基準に成りうることを示した。 口腔癌患者から生検時ならびに切除手術時に口腔癌腫瘍組織を採取し、口腔癌細胞を分離、培養し、いくつかの培養腫瘍細胞が樹立された。培養液中にはIL-6が高濃度でみられ、培養細胞の免疫組織化学的にはIL-6レセプターの発現も高く、オートクライン機構による増殖も示唆された。また口腔扁平上皮癌担癌患者血清中のIL-6,INFγ濃度を測定し、陽性例もみられた。口腔扁平上皮癌の切除癌の凍結標本において、転移抑制遺伝子とされるKAI1/CD82の発現を免疫組織染色法や、RT-PCR法でみると、58%が陽性、42%が陰性であり、原発巣の組織学的悪性度、腫瘍湿潤様式と相関して、陰性例で湿潤傾向が認められた。またMMP-7遺伝子のmRNAレベルでの発現をRT-PCRでみると、45%が陽性、55%が陰性で、陽性例では組織学的分化度、腫瘍の局所再発率と有意な相関がみられたが、原発腫瘍の大きさやリンパ節転移の有無とは相関がみられなかった。 樹立された口腔扁平上皮癌細胞株および口腔癌手術材料より初代培養して短期に培養した口腔扁平上皮癌細胞に対してCostimulatory分子であるCD80,CD86,CD54(ICAM-1)MHC class Iの発現をflowcytometry法で解析したが、CD80,CD86の発現はほとんどみられず、CD54、MHC class Iについてもきわめて弱いものであった。CD80による第2シグナルはCTLの誘導時にとくに必要であるが、CTLの効果発現時にはとくに必要としないと考えらるので、in vitroでCD80アデノウイルスベクターを用いた遺伝子導入腫瘍細胞により誘導されたCTLは養子免疫療法としての効果が期待される。
|