研究概要 |
慢性GVHDは骨髄移植後100日以降に、生存者の25%に認められ、骨髄移植後の生命的予後と密接な関係を持つものである。慢性GVHDの口腔症状はその全身型の90%に出現するものといわれている。 本研究では、骨髄移植患者において移植後100日を目処に、1.口腔粘膜の状態の観察、2.病理組織検査、3.免疫組織化学検査、4.電顕的検索を行っており、現在までの結果では、1.口腔症状では扁平苔癬様の所見、歯肉炎用所見、および真菌症様所見が見られており、全体に色素沈着様の所見が見られるようであったが、口腔乾燥を訴える患者は見られなかった。2.病理組織学的検査(HE染色、PAS染色等)では上皮内、上皮直下および粘膜固有層にびまん性のリンパ球浸潤がみられ、小唾液腺には形質細胞を中心とした中等度の円形細胞浸潤、導管の拡張、腺房の萎縮・変性・消失および小葉間、小葉内の線維化が認められたが、その程度は症例により異なっていた。3.免疫組織学的検査では粘膜上皮の固有層、基底細胞より棘細胞の一部に浸潤したCD4、CD8、HLA-DR陽性所見が認められ、小唾液腺では腺房細胞を中心にCD4、CD8、HLA-DR陽性所見が認められた。現在ICAM-1,LFA-1α,LFA-1βについても染色を行っているが凍結標本が採取できていないものもありはっきりとした結果が出ていない。電顕的検索は現在施行中である。現在も継続して骨髄移植後慢性GVHDの口腔症状の発現した患者の口腔粘膜の採取精査を施行しているが、骨髄移植患者の数がまだそれほど多く確保できず、今後1〜2年の研究継続を必要と考えている。
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