研究概要 |
歯科診療時に採取した新鮮歯髄(10例)および1〜23年室内に保存した歯から採取した陳旧歯髄(20例)からDNAを抽出し,PCR法で増幅したD1S80およびvWAローカスのキャピラリーゲル電気泳動(CGE)法による型判定を試みた。CE装置はQuanta4000(waters)を用い,またキャピラリーカムは内径75μm・長さ35cmを用い,これにポリアクリルアミドゲル(PAG)を充填した。カラムへの試料DNAの注入は電気インジェクション法で行い,泳動は0.1Mトリスほう酸および7M尿素(pH7.2)を含む泳動用緩衝液を用いて行った。型判定は254nmの紫外線吸収測定を行った。 【結果】 D1S80ローカス(16塩基のVNTR)ではこれまでに発見されている29のアリールについて,アレリックラダーマーカーを試料としてCGE法により分離可能か否かを検討したところ,8%T-3.3%Cで分離可能であった。そこでDNA型既知の試料とマーカーを同時に泳動したところ,その型を示すミグレイションタイム(MT)におけるピークの増大が認められ,正しく型判定することが可能であった。 つぎに,vWAローカスについて検討した。まずヘテロ型のDNAを試料として泳動電圧(310〜240V/cm)が分離能に及ぼす影響を検討したところ,電圧が低くなるに従って各アリールのMTは遅くなり,またその差は開く傾向が認められた。つぎに,PAG濃度について検討したところ,5%T-0.5%Cの条件で最も優れた分離能を示した。さらに,vWAローカスのアレリックラダーマーカーを泳動したところ,4塩基のVNTRであり,アリール数も8存在するために分離は困難であった。そこで,プライマーと各アリールのMTを基準点とする型判定線を作製し検討したところ,歯髄DNA30例について型判定は可能であった。これらのvWA型は従来のスラプゲル電気泳動法により判定されたDNA型と同一であった。
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