研究概要 |
本研究課題について以下に示す結果を得た. 〔実験〕 1. 生体安全性の高いin vivo測定用ラジカルを開発するために,ヒドロキシエチルスターチ及びデキトランに安定ラジカルを化学結合させ,高分子糖スピントレーサーを合成した. 2. 高分子糖スピントレーサーをマウスに投与し,X-band ESRおよびL-band ESRを用いてマウス体内におけるラジカル寿命を測定した. 3. 生体組織または臓器におけるスピントレーサーの集積性を検討するためにESR-CTの測定を行い,マウス臓器における分布画像の経時変化を追跡した. 4. 肝臓障害,腎臓障害及び皮膚癌を発症させたモデルマウスを用い,臓器または癌組織のラジカル分布を測定,正常マウスと比較した. 5. ESR-CT法を臓器機能の測定に応用するために,分子量の異なる高分子糖スピンプローブを合成. 肝臓障害マウスおよび腎臓障害マウスに投与し,正常マウスと比較した. 〔結果〕 1. デキストランを予め投与し肝臓RES系を飽和させたマウスは,高分子糖ラジカルのクリアランスが顕著に増大した. 2. 肝臓障害発症マウスにおける高分子糖ラジカルの血中クリアランスは,正常マウスに比較し,著しく増大した. 3. 肝臓障害発症マウスにおける肝臓部位のESR-CT画像の時間変化は,肝臓内の部位によるラジカル消去能の差が明白に現れた. 4. 癌の進行度と血中クリアランスには相関性があり,癌の進行が進むにつれて体内のラジカル消去速度は遅くなった. 5. 肝臓障害マウスと腎臓障害マウスにおいて,分子量4万及び10万の2種類のデキストランスピンプローブの動態は,肝臓,腎臓の機能障害による分子量の差異が明白に現れることが分かった.
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