角膜の温度の気化熱を測定することにより、涙液の状態の変化を測定することが可能であることが理論的および実験的に証明された。本研究者はまず、無作為に選んだ13人のドライアイ患者と7人の正常者の角膜温度を超高感度のビデオサーモグラフィーで測定した。すると、涙液の蒸発量が増えるにつれ角膜の温度変化も激しくなり、角膜の温度が下がることがわかった。 ドライアイにおいては、瞬きごとの温度変化が少なく、一方、正常者では約0.5度から1.0度程度の変化が伴うことが確認できた。超高感度のビデオサーモグラフィーを用いることにより、眼の表面の温度を経時的に測定し、これを評価することは眼の表面の濡れ具合を調べることを可能にし、簡単な測定方法として将来臨床応用できる可能性があると思われる。 完全に無浸襲な温度の測定により、眼の状態が測定できることは非常に興味深い研究である。炎症の把握において体温の測定は基本的なことであるが、眼の温度の測定は涙液による気化熱の影響が大きかった為に実用化されなかった。今回気化熱の影響を用いることによって、涙液の状態を把握することができた。将来は逆に気化熱の影響をとり除くことによって、器械の温度測定が可能になると思われる。これによって眼炎症状態が経時的に測定できると考えられる。
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