研究概要 |
呼気中の微量成分による診断の歴史は長く、ヒポクラテス(Hippocrates)の時代にまでさかのぼるらしい。とくにアセトン臭(果実の甘いにおい)はながいあいだ糖尿病を診断に利用されてきた。 1950年代後半になってガスクロマトグラフ(Gas chromatograph,GC)が開発されてガス分析の感度が飛躍的に向上した。FID検出器では有機化合物が高感度で測定できるので、呼気中のアセトンの分析は、通常この測定法で行われている。しかし、測定には熟練した技術を要し、この方面に不得手な体力・健康科学研究者にとってはより操作が簡単な測定器が望まれる。そこで1990年代初頭から普及しはじめた光音響分光分析法(Photoacoustic spectrometory,PAS)によって呼気中アセトンを簡便かつ連続的に測定し、健康・体力科学に応用することを目的とした。 しかし、18歳から72歳までの健常人15人の安静時の呼気を対象として測定してみたところ、GC-FIDとIR-PASともにアセトンを検出することはできなかった。さらに、20歳の健康な女性(身長164cm、体重55kg)を対象とし、12時間絶食後、自転車エルゴメーターを用い、漸増負荷法で最大運動能力までの呼気を測定したが、アセトンは検出できなかった。
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