研究概要 |
本研究の目的は,体育科におけるダンスの動作,具体的には,ジャズダンスにおけるアイソレーション動作(胸・腰・肩)について,運動構造を明らかにすることであった。本報告では,本年度の結果に加えて,3年間の研究の成果を総括する。 ジャズダンスの技術習熟段階の異なる被験者(熟練者,非熟練者)を対象として,ビデオカメラで被験者(左右肩峰等にマーク)の正面・背面より動作を撮影・録画し,その映像をコンピューター画面にスーパーインポーズして自作のプログラムによりスティックピクチャーを求めて動作*分析を行った。筋電図記録は,多用途万能型脳波計を用い,皮膚表面誘導法により記録し分析した。 肩のアイソレーション動作では,熟練者は肩のみの独立的な上下動が明瞭であったが,非熟練者は可動範囲が小さく,またスムーズな動きが見られなかった(11年度)。腰の動作では,熟練者は膝から腰部を動かし,そして腰のみの独立的な左右動が明瞭であったが,非熟練者は上体が傾いたり捻ったりしてそれらは明瞭でなかった。以上のように,アイソレーション動作の動作分析の新たな知見を得ることができた点で有意義な結果であった。なお,課題動作の特性から現有装置では,微細な分析部位や3次元的な分析等,分析方法に限界があることが分かった。一方,胸のアイソレーション動作では,脊柱動態の人類学的観点(椎体の棘突起にマーク)を取り入れ,以下のような新たな知見が得られた(第19回スポーツ教育学会で発表)。動作分析の結果より,熟練者は背柱を湾曲させて平行に動かしていたが,非熟練者はこのような湾曲は認められなかった。筋電図結果より,胸の右方向へのアイソレーション動作において左の頚最長筋と胸最長筋の上・中部(T1〜T9)の収縮と,それに伴う反対側の頚最長筋および胸最長筋上部の伸張反射による収縮により,上部のしぼみを含めたC7からT12にかけての湾曲が形成されること等,固有背筋の活動様式について一定の推察を行うことでき,これまでにない萌芽的な研究成果をあげることができたと思われる。
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