研究概要 |
生後3週齢のWistar系オスラットを任意に1)コントロール食、2)β-GPA食、3)クレアチン食の3群(それぞれn=6)に分け、別々のケージ内で飼育した。β-GPA及びクレアチンは1%濃度で粉末のコントロール食(日本クレア、CE-2)に混入して与えた。エサの量は発育に応じ漸増したが、4週目からは20g/日ずつpair-feedingした。水は自由に摂取させた。飼育8週目にネンブタール麻酔下で、^<31>P-NMRスペクトラムにより、後肢筋中高エネルギーリン酸含有をチェックした。その後、ヒラメ筋及び長指伸筋を採取し、右肢筋では収縮特性(in situ及びin vitro)を測定し、左肢筋では組織化学的分析を行った。組織化学的では、10μm厚の横断切片に定質的myosin ATPase染色を施し、筋線維タイプ及び横断面積を分析した他、ATPase,succinate dehydrogenase(SDH),及びα-glycerophosphate dehydrogenase(GPD)を定量的に染色し、酵素活性を分析した。β-GPA投与は筋中高エネルギーリン酸含有を低下させ、最大筋力の低下、収縮及び弛緩時間の短縮、疲労耐性の改善及び筋線維タイプの遅筋化を招いた。全筋重量及びslow fiber横断面積の増加抑制も認められた。Myosin ATPase活性は低下し、SDH及びGPD活性は上昇する傾向にあった。クレアチン投与に対する反応は一般的に逆であったが、顕著なものではなかった。この結果、筋中高エネルギーリン酸の長期的な枯渇は筋線維タイプを遅筋化させ、持久力を高進させることが示唆された。このような現象にはミトコンドリアエネルギー代謝の改善や筋線維の横断面積が小さいことに起因した網細血管から筋線維中心部までの拡散距離の減少などが関与していることも示唆された。しかし、逆は必ずしも真ならずで、筋中高エネルギーリン酸の高進による顕著な速筋化は認められなかった。
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