研究概要 |
本年度の主要な実績を以下に述べる。 1. カオチックシステムY_t=F(Y_<t-r>,Y_<t-2r>,...,Y_<t-dr>)、ただしF:R^d→Rは未知、εはダイナミックノイズ、について考察した。昨年度に、埋め込み次元d、遅れ時間τの推定法を開発したが、本年度は実際に生体から指先脈波を計測し、実証的研究を行った。同一人物でも右手、左手、午前、午後に計測して得た推定値は異なること、アトラクターの形状もかなり大きくゆらぐという知見を得て、同一人物を安定的に特定する方法を試行錯誤的に考察した。カオスと非線形時系列博多シンポジュウムで発表した。また関連論文を一編専門誌に投稿中である。 2. 上の方法はFをNadaraya-Watson型のカーネル型推定量で推定するが、Fの推定値F^^<^>が得られれば、この推定値を用いてダイナミックノイズを消去したシステムX_t=F^^<^>(X_<t-τ>,X_<t-2τ>,...,X_<t-dτ>)が生成できる。このシステムからならLiyapunov指数が従来の方法で推定できる。この着想の下で、ダイナミックノイズが付随する場合の系列のカオス性を判定する新しい判定法式について研究を行った。Fの推定にはカーネル型推定量では無理で、B-スプライン関数を用いる方が良いことが示唆された。有意義な新しい研究課題である。
|