研究概要 |
亜酸化窒素(N_2O)ガスは、温室効果ガスであると同時にオゾン層破壊の原因物質であることが見い出され、近年の大気中濃度の上昇が大きな注目を集めている。食糧増産にともなって使用量が急増してきた農耕地での窒素肥料の施用が、重要な亜酸化窒素発生源として指摘されている。本研究は、まず土壌中で亜酸化窒素ガスの吸収が起こっていることを明らかにし、その作用が土壌微生物活動によることを確認して、当該微生物の単離と生理的特徴を明らかにしたのち、この微生物を用いて土壌からの亜酸化窒素ガス放出量を制御することが可能かどうかを検証するための、基礎的知見を集積することを目的とした。また大気への亜酸化窒素放出量が土壌中での亜酸化窒素生成量と消費量の差であることに注目し、本年度は土壌中での亜酸化窒素生成量に及ぼす各種土壌因子の影響についても検証した。得られた成果は以下の通りである。 1) 土壌中で亜酸化窒素ガスの吸収を行なう土壌微生物の同定を試みた。 土壌試料を培養し、その亜酸化窒素濃度の変化から、亜酸化窒素吸収が土壌微生物活動によることを確認し吸収菌を分離た。次に、Pseudomonas, Rhodococcus, Acidovorax, Pasteurella, Rothia, Corynebacterium属などが寄与することをバイオログシステムを用いて明らかにした。 2) 土壌水分、塩類濃度が亜酸化窒素生成量に及ぼす影響を解析した。 乾燥土壌やハウス土壌を想定した室内培養実験で、窒素肥料のモデルとして硫酸アンモニウムや硝酸カリウムなど塩類溶液・粉末を添加して、亜酸化窒素ガス濃度の変化を経時的に測定した。その結果、土壌中の亜酸化窒素生成が土壌水分と塩類濃度に大きく支配され、特に土壌塩類濃度が0〜0.1Mでは亜酸化窒素生成が促進されることを初めて明らかにした。
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