研究概要 |
脊椎動物視細胞における新しい光情報経路として低分子量GTP結合タンパク質に注目し,その精製と性質の検討を目指した.ウシROS内に低分子量Gタンパク質の存在を追認し,精製を試みた.その過程でROSの低分子量Gタンパク質が5M尿素など膜表在性タンパク質を可溶化させる条件でも膜に残り,界面活性剤処理によってはじめて膜から溶出されることを明らかにした.ROSの低分子量タンパク質は,膜貫通性タンパク質あるいはGPIアンカーされたタンパク質等のように,膜に強く結合したタンパク質である可能性が示唆され,これまでに報告させた低分子量Gタンパク質とは,かなり異なる性質を持つことが推測された.また,Con Aカラムを用いてROSの主要タンパク質であるロドプシンと低分子量Gタンパク質を分離することができたが,部分精製したタンパク質をCBB染色で検出することはできなかった. さらに,intactに近いウシROSを用いて,C3ボツリヌス毒素によってADPリボシル化される低分子量タンパク質を検討し,ROS内にいくつかの基質となるタンパク質を確認した.このタンパク質のADPリボシル化が光依存的に抑制されること,GTPγS,GDP,AlF_4^-などの薬剤が光依存的,非依存的にADPリボシル化に影響を与えることを明らかにした.これらの結果からROSの低分子量Gタンパク質が3量体型Gタンパク質のβγサブユニットおよびGTPそのものによって支配されている可能性が示唆された.本研究結果は,視細胞における新しい光情報変換系の存在を示唆する興味深いものであり,今後の研究の端緒を開くことができた.
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