概日リズムをもたらす生物時計は、哺乳類では視交叉上核(SCN)に存在する。今回の研究目的はSCN細胞を神経芽細胞種と細胞融合することによって不死化し、遺伝的、細胞生物学的性質の均一な細胞群(クローン)を得ること、(2)遺伝子発現リズムのリアルタイムモニタリングシステムを開発することを目的に下記の実験を行い、結果を得た。(1)細胞融合法の確立:分散化したマウスのSCN細胞を、神経芽細胞種と細胞融合するための条件を検討したところ、phytohemagglutinin-P(PHA)を含む培地に懸濁し、37Cで10分間incubationした後、ポリエチレングリコールを室温で作用させる方法が一番効率が良く、かつ細胞の生存率も高かった。上記方法で融合した細胞のみを、特殊な倍地で選択し、その後低密度培養することによって、染色体構成や細胞学的性質の均一な細胞群を7クローン得た。(2)レポーター遺伝子としてGreen Fluorescent Protein(GFP)を用いたところ、代謝時間が非常に長く、概日リズムのような繰り返し変動する現象のモニターには不向きであることが解った。次に、レポーター遺伝子として代謝時間の短いLuciferinを用いた。また、培養細胞にtransfection法で遺伝子を導入するのではなく、Luciferin遺伝子の導入されたtransgenic mouseを用いることとした。このマウスを作成したVirginia大学のGene Block博士と共同で、視交叉上核の培養細胞の発光を経時的に測定したところ、概日リズムを示すことが確認された。
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