研究概要 |
NO合成酵素は分子量30万前後の2量体蛋白質であり、複数の反応中心をもつ複合金属フラビン酵素である。サブユニットあたり1つのHeme,FAD,FMN,Tetrahydrobiopterin,Calmodulinを含む。フリーラジカル産生酵素であり、複数の反応中心にそれぞれ異なる基質が反応し、反応中心間に電子伝達がおこるという性質を有している。NO合成酵素は、情報伝達の発生器として注目を集めている酵素で酵素である。本研究の今までの研究経過とその成果は以下のとおりである。小脳局在型NO合成酵素につき、その安定性に関与する新しい因子の検索を行いながらcDNA発現系による大量調整法を手がけてきた。ラット小脳よりNO合成酵素の精製は、今まで多くの研究室で試みられてきたが、酵素活性は極めて不安定であり、その活性は0℃でも1〜2時間で80%の活性を失うことが知られている。しかし我々は不安定性の原因につき検討した結果、リン脂質とCaが関与した問題であることを見い出した。Caキレート剤であるEGTAによりその活性低下は防げることが判明し、その機構としてCaにより安定化因子であるリン脂質が酵素より解離し、酵素を失活させることが判明した。安定化の主要物質はphospholipase,PE特異的結合蛋白処理でその作用が消失することおよびTLC分析、TOF-massからPhosphatidyletanolamine(PE)であることは知られた。以上の結果は、生理的には調節的な意義を予想させた。即ち、Caが単にCalmodulinを介した酵素活性化ばかりでなく、さらに高濃度(mM程度)のCaがリン脂質を酵素から離し活性を停止させるダウンレギュレーションとしても働いていることが予想された。このことはNO放出がパルス上に行われることを想定させる。
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