研究概要 |
本研究は、世界的に利用できる鉄鋼状態図のデータベースの構築と、熱力学的に計算・予測するためのシステムを開発するための企画調査を行った。具体的には(i)鉄鋼状態図に関する文献検索とその評価、(ii)計算状態図に関する状況調査、(iii)相平衡予測システム開発のための問題とその対策である。まず(i)に関しては、1990年以前のデータは米国金属学会ASMより2元および三元状態図集が発刊されているがそれ以降については、本研究グループの岡本教授がデータベース化を行っている状況である。また(ii)については、既に計算状態図のソフトウェアーを購入し、使用しているのは、10大学、6国立研究所、43企業(事業所を含む)であり、本邦における活動状況は世界のトップレベルである事がわかった。企業の中には独自で開発したデータベースを所有しているものもある。(iii)については、現状においても一般鋼、ステンレス鋼、工具鋼については、多元系の計算が既に行われており、これをさらに拡張する必要がある。特に実用的に重要な、Nb,Ti,Vなどのマイクロアロイング元素と、C,N,O,S,Bなどの元素を含んだ計算状態図の整備が重要である。さらに磁性材料として重要なFe-Al,Fe-Si系に代表される規則相と磁気変態とが複雑に影響を及ぼす系については、熱力学モデルの検討が必要であるが、本研究グループによって両方の効果を取り入れる手法を提案する事が出来た。以上の状況より、相平衡を予測するシステムは、世界的ネットワーク上で十分可能な状態であり、今後の基礎研究に期待したい。
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