研究概要 |
平成9年11月に河田と林は米国ロサンゼルス地域,サンフランシスコ湾岸地域,およびワシントン州シアトル地域を訪れ,米国における地震防災の実務および研究においてバーチャルリアリティ技術の利用状況と今後の展望に関する現地調査を行った.さらに,平成10年3月4・5日にワークショップ「災害を観る」を京大会館で開催し,災害の可視技術について体系化を行った.その結果,少なくとも地震災害過程の研究においてはバーチャルリアリティ技術は,迫真性,超現実性,相互作用性という3つの特徴によって把握できることが明らかになった.第1の迫真性とは,現実の存在する対象ときわめて対応性の高い心的表象を構築しうることを指し,コンピューターグラフィックスによる静止画及び動画の作成が主である.第2の超現実性は,現実には存在し得ない対象を心的表象としては構築できる機能をさす.そこではコンピューター技術よりも現実には存在しない対象に関してどれだけ明確なイメージを構築できるかの想像力にかかっている.これら2つの特徴は観察者としての人間が持つ心的表象を問題としている.それに対して第3の特徴は行為者としての人間が持つ心的表象に関する特性である.自分の環境に対する働きかけによって環境像が変化する.自分の行動と環境の変化との間に協応関係が存在することを指す.低頻度事象である巨大災害を考える地震災害研究ではバーチャルリアリティの第2の特性である超現実性に着目した技術開発が必要性あり,今後はより抽象度の高い現実の構成をめざすという意味から「オ-ギュメンテッドリアリティ」の構築に関する研究の推進が必要であることが明らかになった.
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