研究課題/領域番号 |
09F09028
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 外国 |
研究分野 |
素粒子・原子核・宇宙線・宇宙物理(理論)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
大西 明 京都大学, 基礎物理学研究所, 教授
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研究分担者 |
RUGGIERI Marco 京都大学, 基礎物理学研究所, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2009 – 2011
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研究課題ステータス |
完了 (2011年度)
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配分額 *注記 |
2,100千円 (直接経費: 2,100千円)
2011年度: 600千円 (直接経費: 600千円)
2010年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2009年度: 600千円 (直接経費: 600千円)
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キーワード | 量子色力学(QCD) / 非閉じ込め相転移 / カイラル相転移 / 強磁場 / カイラル磁気効果 / カラー超伝導 / QCD臨界点 / 非幾何学的ソリトン / QCD / 相図 / トポロジカル励起 / 相対論的重イオン衝突 / 3重臨界点 |
研究概要 |
強い相互作用の基礎理論である量子色力学(QCD)の相図について研究を進めた。特に、強い背景磁場の下での非閉じ込め相転移と真空では自発的に破れたカイラル対称性の回復(カイラル相転移)がどのように絡み合うか、という点に着目して研究を進めている。この観点に基づいて、2011年度には(1)カイラル化学ポテンシャルの下でのQCD相図、(2)高密度物質におけるカラー・フレーバー・ロックト相(CFL相)における集団モード、(3)非対称物質のQCD相図等について研究を進めてきた。(1)相対論的衝突型重イオン衝突型加速器(RHIC)における重イオン衝突では局所的なCPの破れが観測されており、カイラリティのずれと強磁場の効果による影響(Chiral Magnetic Effects)ではないかとの予想がある。M Ruggieriは2010年度には重イオン衝突との関連でカイラリティのずれを引き起こすカイラル化学ポテンシャルを導入し、2011年度にはこれを有限密度QCD相図の理解を進める上で有効であることを示した。(3)中性子星などのコンパクト天体現象においては陽子・中性子数のずれが重要であり、これはアイソスピン化学ポテンシャルにより導入できる。2011年度には非対称物質では臨界点温度が下がり、ブラックホール形成過程において物質が通過する温度・密度の領域に臨界点が入ってくるため、QCD臨界点が探索可能であることを示唆する論文を出版した。また1編の論文では(4)低エネルギーへのmediationをもつ超対称性理論において、プラナー対称性をもつ非幾何学的ソリトン解についての論文も出版した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
Marcro Ruggieriは2年間に9編の原著論文を発表しており、かつこれらの多くは第一著者、あるいは実質的第一著者であり、理論核物理領域のポスドクとしては非常にアクティブと判断できる成果である。内容についても大きな進展があったといえる。QCD相図はこれまで多くの場合温度と化学ポテンシャルの2次元で描かれてきたが、Marco Ruggieriはカイラル化学ポテンシャル・磁場・アイソスピン化学ポテンシャルなどの新たな軸を導入して3次元QCD相図研究の分野開拓に大きく貢献した。以上より、当初の計画以上の進展と判断できると考える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題では、主としてQCD有効模型の平均場近似を用いて相図や様々な物理量の応答を調べてきた。現在、平均場模型を越えて揺らぎを取り入れたQCD有効模型による議論が行われている。例えば揺らぎを取り入れる有効な方法である汎関数繰り込み群を用いた非対称物質のQCDについては、共同研究者が研究を開始している。また格子QCD計算による有限カイラル化学ポテンシャルのシミュレーションも開始されている。ここで開拓した多次元QCD相図の物理を、さらに発展した枠組みを用いて調べることは有望な方向であろう。これらの一部については、引き続きMarco Ruggieriとの共同研究を行っていく予定である。
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