研究概要 |
これまで,海浜変形に関する研究は枚挙に暇がないほど数多くのものがなされている.ただし,これらの既往の研究は,沖浜帯から砕波帯,遡上域までを対象とする研究がほとんどである.海浜において大規模な地形変動をもたらす高波浪時には,このような沖域から遡上域までの海浜部のみならず,波が遡上し,さらには越波が生じる海浜域においても大きな地形変動が生じる.しかし,このような間欠的に生じる越波現象に伴う地形変化については,これまでほとんど研究がなされていない.その理由は,(1)現象の生起がまれであり,またその発生箇所も予測が困難であるため,現地データがほとんど蓄積されていない,(2)間欠的に生じる越波による,ドライな砂面上の薄層流を記述する動力学が確立されていないことなどが挙げられる. そこで,今年度の研究においては,このような越波に伴う地形変化に対する対策工の効果に関する検討を行った.対象は宮城県仙台市に位置する七北田川河口の蒲生干潟であり,同所には砂丘頂部に越波防止を目的とした捨て石堤が建設されている箇所と,未整備の箇所がある.そこで,これまでに開発したモデルを両者に適用することにより,3mの越波防止堤の存在が土砂移動を効果的に防止していることが分かった.一方,越波防止堤が整備されていない箇所については,越流により大規模な土砂堆積が生じることが分かった. また,蒲生干潟海岸では津波の越流により砂浜地形が大きく変化した.そこで,2011年3月以降には津波による地形変動についても現地調査を行い,バリアー地形の回復過程を明らかにした.
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