研究課題
特別研究員奨励費
高温超伝導線材は液体ヘリウム温度(4.2K)では30T以上の磁場中でも実用的な電流を流すことが可能であり、強磁場の発生に最も有望な超伝導線材である。本研究では、30T級の磁場を発生するNMR(核磁気共鳴装置)用高温超伝導内層コイル開発の要素研究を実施する。本年度は下記の成果を得た。基板としてHastelloyを使用し、引張応力に対して優れた機械的特性を持つReBCO線材(Reはイットリウム、ガドリニウム等の希土類元素)は強磁場の発生について特に有望である。本研究では製造プロセスの異なる線材(線材AおよびB)について評価した。これら線材の臨界電流は磁場とテープ面の角度に対して強い異方性を持つことから、設計上重要となるテープ面が磁場に対して0゜、10゜、20゜、90゜の角度をなす場合について、4.2K、18Tまでの磁場範囲で測定した。臨界電流は角度とともに急激に減少し、誤差を含むもののコイル設計に使用できるフィッティングカーブを得ることができた。また臨界電流の温度依存性についても4.2Kから77Kの温度範囲で18Tまで測定し、18Tでは、20Kでの臨界電流が4.2Kの50%(線材A)および60%(線材B)となることを確認した。ReBCO線材の室温および77Kでの応力-歪み曲線を取得するとともに、77Kでは引張歪みを加えた状態で自己磁場下での臨界電流を測定した。歪みに対する臨界電流の挙動は線材AおよびBで異なっており、線材Aでは歪みとともに徐々に臨界電流が減少するのに対し、線材Bでは0.5%までほぼ一定であり、0.5%を超えると急激に減少する結果が得られた。しかし両線材とも0.4%の引張歪みに対して歪みがない場合の95%の臨界電流を維持しており、優れた機械的特性を有することが実証できた。
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IEEE Transactions on Applied Superconductivity
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