研究課題
特別研究員奨励費
研究代表者は、ショウジョウバエのステロイドホルモン産生器官である前胸腺をモデル系として、コレステロールの輸送や代謝に関わる新規因子の発掘と機能解析を行った。研究期間中、複数の遺伝子について発現解析と分子遺伝学的解析を実施したが、特にコレステロール代謝酵素Neverland(Nvd)に関する研究を大きく進展させることが出来た。研究代表者は、Rieske型酸化酵素であるNvdが、昆虫と線虫のステロイドホルモン生合成経路におけるコレステロールから7-デヒドロコレステロールへの変換を担うことを生化学的に証明した。興味深いことに、nvd相同遺伝子は後口動物であるウニやホヤ、さらには哺乳類を除く脊椎動物にも高度に保存されていた。研究代表者は、これらの後口動物由来のnvd相同遺伝子産物においてもコレステロール代謝活性が保存されていることも明らかにした。一連の成果は、動物界のステロイドホルモン生合成機構およびコレステロール代謝機構の進化研究に一石を投じた。さらに研究代表者は、上述のNvd研究の過程で得られた酵素活性測定技術を活用し、フランスのグループと共同で、サボテン嗜好性ショウジョウバエDrosophila pacheaにおけるnvd遺伝子の解析を実施した。D.pacheaは、コレステロールを原材料とせずにエクジソンを生合成することが知られている特殊なショウジョウバエである。研究代表者らは、D.pacheaからnvd遺伝子をクローニングし、D.pachea Nvdタンパク質がコレステロールに対する基質特異性を失い、サボテン内に存在する特殊なステロールを基質とすることを示した。これらの成果は、単一遺伝子におけるアミノ酸の変異が種の生態に影響を及ぼしたことを示した、初めての例である。
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Journal of Biological Chemistry
巻: 286 号: 29 ページ: 25756-25762
10.1074/jbc.m111.244384