研究概要 |
工具刃先運動の工作物への転写量を調査するために,加工機の運動と工作物の形状を機上で測定する加工システムを開発した.正弦波形状の加工における刃先運動と工作物形状の全振幅比を転写率と定義し,転写率を求める方法を提案した. 提案した方法により,工具と被削材をそれぞれ変化させた場合の転写率を調べた.工具では,単結晶・多結晶ダイヤモンド工具の転写率を調べた.被削材には無電解ニッケルと,より一般的な材料の中からアルミニウム合金を選択した. 単結晶ダイヤモンド工具を用いて無電解ニッケルを加工した場合,転写率は0.9~1.1であり,刃先運動がほぼ完全に転写されていることがわかった.しかし,多結晶ダイヤモンド工具を用いて無電解ニッケルを加工した場合は,転写率が1.2程度となる場合があることがわかった.この転写率には正弦波の谷の部分の切り過ぎ・掘り起こしが大きな影響を与えていた. そこで,多結晶ダイヤモンド工具を用いた無電解ニッケルの加工において,転写量に対する切込み量,すくい角,逃げ角の影響を調べた.その結果,切り過ぎが生じたのは正弦波の谷の部分ですくい角が減少し,逃げ角が増大することが原因であると考えられる. 従来では,マイクロオーダの刃先運動の形状への転写精度を調べた研究はほとんどない.このため,高精度な形状創成を行うための刃先運動の制御はどうあるべきか,また加工機の動的な設計はどうあるべきかが明らかになっていない.本研究では,刃先がマイクロオーダで運動した際の転写率はほぼ1であること示し,従来は報告されていなかった掘り起こしや切り過ぎなどの現象で転写率が変化することを発見した.
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