研究概要 |
C-O-H fluidはマントル鉱物の化学組成や溶融に大きな影響を与えることから、マントルダイナミクスを考える上で非常に重要な物質である。C-O-H fluidは酸化還元状態によって組成が変化し、還元的な地球深部ではH_2Oに加えてH_2,CH_4として存在していると考えられている。これまで、地球深部のH_2Oとマントル鉱物の反応に関しては多くの研究がおこなわれており、H_2Oが共存する条件下でのケイ酸塩鉱物の相関係や溶解反応が明らかにされている。カンラン石は上部マントルの主要構成鉱物であり、H_2O-カンラン石系ではカンラン石がH_2O中に調和溶解することが報告されている。一方で、H2共存下におけるカンラン石の溶解反応は明らかになっていない。 本年度はH_2とカンラン石を出発物質とする高温高圧実験を行った。出発物質のカンラン石には、鉄を含まないforsterite(Mg_2SiO_4)を用いた。圧力の発生にはダイヤモンドアンビルセルを用い、目的の圧力まで加圧した試料をCO_2レーザー、YAGレーザーを用いて加熱し、高温条件を発生した。放射光を用いた粉末X線回折実験および走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いた回収試料の組織観察から、2.5GPa, 1400Kから15.0GPa, 1500Kの温度圧力条件下でforsteriteが分解溶解し、periclaseとfluid相となることが明らかになった。Fluid中のsilicate成分のMg/Si比は非常に低い、すなわちSiO_2に富んでいると考えられる。これはカンラン石の調和溶解が起きるH_2O共存下における溶解反応と対照的であり、本研究の結果は、C-O-H fluid中に溶解するケイ酸塩鉱物の組成は共存するC-O-H fluidの組成によって大きく変化することを示すものである。
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