研究概要 |
2012年度は、2008年に東京工業大学細野研究室で発見され、現在でも世界中で精力的に研究されている鉄系超伝導体の超伝導ギャップ構造の研究を、磁場侵入長測定という準粒子の低エネルギー励起に非常に敏感なプローブを用いて詳細に行った。特に純良単結晶試料が得られるBa122系とLi111系を中心に、高精度な測定データから、その超伝導ギャップ構造におけるゼロ点(ノード)の有無を同定した。その結果、鉄系超伝導体の超伝導ギャップ構造はFe面からのニクトゲンの高さhPnによって、ノードを持つものと持たないものに分類できることを明らかにした(Physical Review Letters 108,047003 (2012))。このように、鉄系超伝導体の超伝導ギャップ構造は物質群によりノンユニバーサルであり、鉄系超伝導体のマルチバンド構造と密接に関わっていることを明らかにした。これは、鉄系超伝導体の超伝導発現機構に重要な情報を与えるものである。 さらに、当該年度は鉄系超伝導体BaFe2(As1-xPx)2において、様々なP置換量xに対して磁場侵入長の絶対値測定を行った。その結果、常伝導状態において反強磁性転移が消失する置換量において、超伝導ドーム内で磁場侵入長の絶対値が鋭いピーク構造を持つことを明らかにした。これは超伝導相内部に量子臨界点が存在することを示しており、強相関電子系における超伝導と量子臨界性に関する重要な示唆を与える結果であると言える。 本研究員は、上で述べた研究成果を投稿論文として発表すると共に、国内外の研究会や会議に参加し、積極的に研究成果を発表した。
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