研究課題
特別研究員奨励費
本研究では、宇宙の星形成を支配する高光度赤外線銀河について多角的・統計的・定量的に調査した。特に、日本の「あかり赤外線天文衛星」および米国の「スピッツアー赤外線宇宙望遠鏡」を駆使したことにより、新しいエネルギー源診断法の確立とスターバースト銀河における物理化学状態を明らかにした。特に、本研究のサンプルは、近傍宇宙のLIRGsを網羅したものであり、初めて均質かつ統計的なデータを用いることによりLIRGsの全体像を捉えた。本研究員が筆頭研究者として取得した、あかり衛星の2.5-5μm帯の近赤外線分光データを利用し、新たなエネルギー源診断の手法を確立した(図1)。この波長帯では、スターバーストを示唆するダスト粒子・多環芳香族炭化水素(polycyclic aromatic hydrocarbon,PAH)の輝線が3.3μmに、星形成率の指標となる水素原子の再結合線が4.05μmにあり、さらに、AGNに起因する高温の塵からの熱放射(連続光)を観測することができる。スピッツアー宇宙望遠鏡には、この波長帯を分光観測する装置がないために、この情報を得ることは一切できない。特に3.3μmのPAH輝線は、将来ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が打ち上げられた際に、非常に重要な役割を持つ。次に短い波長にあるPAH輝線は6.2μmであり、赤方偏移が4以上の遠方銀河では、望遠鏡の観測可能波長帯の外側(長波長側)にシフトしてしまい、観測が不可能になるためである。この成果により、遠方銀河にも応用することができる新しいエネルギー源診断法を初めて確立することができた。ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の時代には、この業績は非常に重要になることが期待されている。これに加え、4.05μmの水素再結合線の等価幅を調べることにより、銀河を構成する星の年齢を明らかにした。この輝線と3.3μmのPAHダスト放射の放射強度比からは、近傍宇宙にあるLIRGsの電離度も調べることができた。近傍LIRGsの性質をこのように網羅的に調査した研究は初めてであり、これらの成果は高赤方偏移の銀河を調査するための基準点となる。
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すべて 雑誌論文 (15件) (うち査読あり 15件) 学会発表 (5件) 備考 (2件)
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