研究概要 |
申請者は,うつ病における興味や喜びの喪失に注目し,これらのアンヘドニア症状について報酬・罰に対する感受性の観点から認知神経科学的検討を行うことを研究課題とした。今年度は,昨年度予備検討を行った遅延割引課題を用いて,健常者とうつ病患者を対象としたfMRI実験を行った。健常者を対象としたfMRI実験はデータ収集が終了し,現在解析を行っている。うつ病患者を対象としたfMRI実験に関しては,15例の実験が終了し,現在もデータ収集を継続している。本解析において,うつ病患者と健常対照者との脳機能を比較して,うつ病における意思決定の障害に関わる脳内メカニズムを検討するとともに,集団認知行動療法に参加しているうつ病患者を対象に集団認知行動療法の前後比較を行い,認知行動療法の治療作用メカニズムを検討することを予定している。 なお,fMRIを用いた安静状態における脳機能の評価も近年注目されてきており,治療反応予測など臨床応用も視野に入れた研究が行われている。本年度は安静時fMRIの測定法と解析法を確立し,これまでの得られたデータを用いて基礎的な検討を行った。まず,セロトニン欠乏手続きを用いて,うつ病にも関連している脳内セロトニン低下と安静時脳活動の関連性を明らかにし,その研究成果はNeuroscience Research誌に掲載された。さらに,うつ病の難治化との関連する性格特性と安静時脳活動を検討し,その研究成果がNeuroscience Letters誌に掲載された。これらの安静時fMRI研究は本研究課題の理解において有用であり,さらなる臨床的な応用にもつながることが期待できる。
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