研究課題/領域番号 |
09J01103
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 国内 |
研究分野 |
物理化学
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
大谷 優介 北海道大学, 大学院・理学院, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2009 – 2010
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研究課題ステータス |
完了 (2010年度)
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配分額 *注記 |
1,400千円 (直接経費: 1,400千円)
2010年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2009年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
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キーワード | Ab initio分子動力学法 / トンネル効果 / 半古典法 / Ab initio分子動力学 / 相対論的効果 / 計算コスト / アゾベンゼン |
研究概要 |
本年度は分子シミュレーション手法のひとつであるAb initio分子動力学(AIMD)法とMakri-Millerの半古典法を組み合わせ、トンネル効果を見積もる汎用的な手法の開発を行った。 AIMD法はab initio電子状態計算から得られるエネルギー勾配をもとに原子核のニュートンの運動方程式を解くことによって分子シミュレーションを行う方法である。ポテンシャル関数を必要とせず、任意の化学反応へ適用可能な汎用的な手法であるが、原子核を古典的に扱っているという欠点がある。原子核は電子に比べ数千倍のオーダーで重く、量子効果はそれほど大きくないため原子核を古典的に取り扱うことがよい近似になるが、水素のように軽い原子ではその量子効果が化学反応に重要な役割をはたす。特にトンネル効果は水素移動反応や、プロトン移動反応で重要になる。しかし、原子核を量子的に扱うシミュレーションは膨大な計算コストを要するために非常に小さな分子に限られているため、AIMD法の枠組みで適切にトンネル効果を見積もる手法が求められている。 本研究ではトンネル効果を考慮する方法として、Makri-Millerの半古典法を採用した。Makri-Millerの半古典法はシンプルかつ計算コストも大きくないことから、大きな分子や計算コストを要する電子励起状態への適用が期待できる方法である。これまではあらかじめ決定したポテンシャル関数を用いて応用計算が行われてきたが、AIMD法と組合せ、on-the-flyでポテンシャルエネルギーを計算することによって、さらに汎用性の高い手法になる。Makri-Millerの半古典法をAIMDコードに実装し、アンモニアの傘反転反応とマロンアルデヒドの分子内水素移動反応へ適用した。シミュレーションの初期条件、トンネル経路、転回点の決定について適切な条件を検証し、トンネル分裂の計算を行なった。計算結果は定量的に実験値を再現し、トンネル分裂を低コストで見積もる手法の開発に成功した。 本研究の成果は近日Journal of Computational Chemistryへの投稿を予定している。
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