研究課題/領域番号 |
09J01105
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 国内 |
研究分野 |
素粒子・原子核・宇宙線・宇宙物理
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
酒谷 雄峰 京都大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2009 – 2012
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研究課題ステータス |
完了 (2011年度)
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配分額 *注記 |
2,100千円 (直接経費: 2,100千円)
2011年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2010年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2009年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
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キーワード | 非平衡熱力学 / 相対論的流体力学 / レオロジー / ブラックホール / 超弦理論 / 連続体力学 / 粘弾性体 |
研究概要 |
本年度は、昨年度に引き続き、より一般的な粘弾性体模型についての研究を行った。 超弦理論から予言されているゲージ理論と重力理論の間のホログラフィックな対応と、粘弾性体理論を組み合わせることで、動的なブラックホール時空のダイナミクスを非平衡熱力学的な視点から記述しようというのがこの研究の目的である。本年度は、特に、粘弾性体の緩和時間を複数導入するという一般化や、線形非平衡の領域からのずれも記述できるようにより高次の微分項も取り込むという一般化について研究した。さらに、この新たな相対論的粘弾性体模型を、相対論的な重イオン衝突実験の現象論として利用するという方向性についても議論を深めた。 また、本研究課題の主な目標である超弦理論における時空構造の解明を目指した研究として、超弦理論を考えることで初めて現れる非幾何学的な時空についても研究した。この非幾何学的な時空はU-foldと呼ばれ、この時空のあるサイクルにそって一周移動すると計量などの背景場に対して非自明なU-duality群が作用し、場の値が元の値に戻らない。このU-foldの例は幾つか知られているが、我々は、弦やブレーンが特定のU-foldの非自明なサイクルを回ったときに、そのチャージがどのような変換を受けるのかを調べるという研究を行った。この研究は、U-foldの性質について理解を深める上で重要であり、特にブラックホールの微視的状態の数え上げなどを行う際に重要になる。また、超弦理論における保存チャージの定義を考え直す上でも重要になると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ブラックホールの普遍的性質を探る上で、ブラックホール熱力学についてさらに理解を深めることは重要である。本年度の研究は、ブラックホールの非平衡熱力学を理解するための新たなアプローチとして重要な役割を果たすと期待される。また、本年度に行った超弦理論を考えることではじめて現れるU-foldに関する研究も、「超弦理論における時空構造の解明」という本研究の目的を達成する上で非常に重要である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、これまでに行った非平衡熱力学の新たな定式化に基づいて、重力理論における非平衡ダイナミクスを記述する理論を定式化する。そして、この定式化を基にして、一般化された熱力学第二法則の証明などを目指す。さらに、時空の熱力学的振る舞いの背後に存在すると期待される重力場の微視的理論を探求する。現在、微視的理論の候補としては超弦理論が有力な候補であり、超弦理論を考えることで自然に現れる非幾何学的な時空(U-fold)について研究する計画である。この研究により、ブラックホールの微視的状態がどの様な幾何学的振る舞いをするのか、といった点を明らかにしたい。
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