研究課題
特別研究員奨励費
生体内で産生されるフリーラジカルは、還元物質などとともに、我々生命体の恒常性維持に寄与している。しかし、生体内の酸化・還元(レドックス)バランスが破綻すると、フリーラジカルは生活習慣病やがんなどの疾患を引き起こす原因となることが示唆されており、今後益々拡大する酸化ストレス疾患の原因解明や創薬を行うためには、レドックス反応が生体内のどこで、どのように関与しているかを明確にしなければならない。そこで、本年度は、疾患関連分子・周囲レドックス環壌の可視化に向けた新規造影剤の開発と応用として、脂質ラジカルを標的にしたプローブの合成・評価を行った。具体的には、申請者らがこれまでに開発したピペリジン系ニトロキシドの合成法を用い、脂質親和性向上を目論み、ニトロキシドラジカル近傍に種々のアルキル側鎖を導入した新規ニトロキシドを合成した。ESR、TBARS法により脂質反応性、脂質過酸化抑制効果を評価したところ、n-ペンチル基またはn-オクチル基のアルキル鎖を導入したニトロキシドが、メチル、エチル基と比較して、より高い脂質反応性、過酸化抑制効果を有する結果が得られた。また、これらはプローブの油水分配係数と相関することが示され、プローブ設計の指標とすることができることを示した。これらの成果は、脂質を標的分子とし、膜周囲のレドックス環境を反映するプローブとしての有用性を示すと共に、他の標的分子への応用可能性を提示したものである。また、以上の研究成果は、Journal of Organic Chemistry誌に論文発表を行った。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (5件)
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