研究概要 |
本研究ではウイルス感染によって起こるオートファジー誘導機構の解析を目的として、ウイルス感染モデルマウスを用いてin vivo,in vitroでの感染実験を行っている。麻疹ウイルスを用い、麻疹のエントリー受容体であるヒトCD150を発現したマウス(CD150Tg)とtype I IFN受容体(IFNAR)ノックアウト(KO)マウス、細胞内RNAセンサーのアダプター分子であるIPSIKOマウス、2本鎖RNA受容体であるTLR3のアダプター分子であるTICAM-IKOマウス、type I IFNの発現誘導に必須とされている転写因子であるIRF3/IRF7ダブルノックアウト(DKO)マウスを交配し、得られたマウスでin vivoでの感染実験を行った。これまでの報告通りCD150Tg/IFNARKOマウスでは感染が成立し、今回作製したCD150Tg/IRF3/IRF7DKOでも感染が確認された。麻疹ウイルスは細胞内RNAセンサーであるRIG-I,MDA5により認識され、type I IFNを産生すると報告がされているが、それら受容体のアダプター分子であるCD150Tg/IPS1KOではin vivo感染は成立しなかった。CD150Tg/IPS1KOでは抗IFNAR抗体投与により麻疹への感受性が高まったことから、CD150Tg/IPS1KOマウスにおいてtype I IFNが産生され、麻疹ウイルスが排除されると考えられる。また、各種KOマウス由来の脾臓からCD11c陽性樹状細胞を採取し、in vitroで感染を行うと、CD150Tg/IFNARKO,CD150Tg/IRF3/IRF7DKOマウス由来の樹状細胞では感染が成立したのに対し、CD150Tg/IPS1KO,CD150Tg/TICAM1KO由来のものでは感染は観察されず、培養上清中にtype I IFNが見られた。そこで抗IFNAR抗体を加えると感染が成立した。これらの結果から麻疹ウイルス感染によるtype I IFNの産生はIPS1,TICAM1非依存的であることが示された。TLR3,RIG-I/MDA5以外のRNAの認識経路としてエンドソームに存在するTLR7が報告されている。そこでTLR7のアダプター分子であるMyD88を阻害するとCD150Tg/IPS1KOの樹状細胞でも麻疹の感染が観察された。このことは麻疹ウイルスの認識からType I IFNの産生にはMyD88経路に依存していることを示している。現在、CD150Tg/MyD88マウスを作製し、感染実験を行っている
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