研究課題/領域番号 |
09J01514
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 国内 |
研究分野 |
日本文学
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
田中 裕也 同志社大学, 大学院・文学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2009 – 2011
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研究課題ステータス |
完了 (2011年度)
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配分額 *注記 |
2,100千円 (直接経費: 2,100千円)
2011年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2010年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2009年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
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キーワード | 三島由紀夫 / 生成論 / 草稿研究 / ニーチェ / 主体性 / アプレゲール / モーリャック / 宗教 / 主体性論争 / 文学理論 / 成立過程 |
研究概要 |
今年度の研究実施状況を下記に、三点に分けて報告する。 1、昨年度に投稿し、ジャッジメントを経ていた「三島由紀夫「親切な機械」の生成-三島由紀夫とニーチェ哲学-」が「日本近代文学」第84集(2011年5月)に掲載された。主に、三島が事件資料をどのように選別し執筆を行ったのかを検討した。また三島が同時代の「主体性」を巡る論争自体を無効にするために、流動的で統一されない「主体」を主張するニーチェ哲学を援用していると論じた。 2、昨年度から継続して調査・研究していた「青の時代」(1950年12月)を論文化し、「三島由紀夫「青の時代」の射程-道徳体系批判としての小説-」として、「昭和文学研究」第64集(2012年3月)に掲載された。三島は「アプレゲール」の代表的人物と見なされていた、山崎晃嗣に関する資料を収集しつつも、クレッチマーやニーチェ哲学を用いて主人公を描いていることを明らかにした。また戦後言説空間では「道徳」という言葉が国家再建の理念と密接に結びついていたが、一方で反社会的で秩序に当てはまらない若者たちを、「不道徳」な「アプレ-ゲール」として排除していく流れがあった。「道徳」と「不道徳」が一見対立する概念に見えながらも、この二つの概念は共犯関係的なものであることを、三島がニーチェ哲学を援用して「青の時代」の中で批判的に描いていることを明らかにした。 3、山中湖文学の森・三島由紀夫文学館」において二回(各四日間・計八日)の草稿調査・研究を行った。主に「愛の渇き」(1950年6月)の草稿400枚弱について調査・研究を行った。「愛の渇き」の草稿には、二つの大きな改編箇所があることが分かった。今後研究内容をまとめ論文化する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究成果としては、新たな発見や査読の有る雑誌にも掲載され、それなりに出ている。しかし三島由紀夫文学館での草稿調査には、写真撮影やコピーは不可能で、一字一字書写していく必要がある。そのため当初の計画よりも時間がかかっている部分もある。
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今後の研究の推進方策 |
上記にも示したが、三島由紀夫文学館での草稿調査は資料自体膨大でありながらも、著作権の関係で一字一字書写していかざるを得ない。これ自体も膨大な時間を要するが、今後も引き続き調査・研究を行っていく必要がある。次に生成論自体に対する問題に目を向けたい。フランスの生成論に関する文献等を輸入し生成論に関する研究を行ったが、フランス生成論だけでは草稿と活字テクストとの在り方が概念的に曖昧な部分も多く、研究としての精度を追求するには限界があった。今後はポストモダンの思想を経た、ドイツの編集文献学やデジタルアーカイブ学に目を向けながら、草稿研究の新たな方向性を模索していきたいと考えている。
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