平成22年度は、前半の約3ヶ月半をナイジェリアで過ごし、フィールドワークおよび派遣先大学であるイレ・イフェのオバフェミ・アウォロウォ大学の研究者や学生とのディスカッションに従事した。イレ・イフェ市内では、アーティストたち(造形活動の担い手たち)や彼らを取りまく人びとへのインタビューと参与観察をおこなった。この現地調査ではとくに、当該社会における「アート/造形」の定義と認識に焦点を絞り込んだ。10数名のアーティストたちを頻繁に訪れて調査をつづけながら、ひとりのアーティストに密着し、彼の生活とインタビューを映像におさめた。 帰国後はフィールドワーク中に撮影した映像を10分弱の映像に仕上げ、国内外の研究関係者にも調査地の人びとにも観てもらい、フィードバックをもらえるようにした。また、日本国内2か所の博物館と美術館でおこなわれたナイジェリア在住アーティストの展覧会の準備段階において、参与観察とインタビューをおこなった。これによって、グローバルに活動するアーティストとナイジェリアのローカルなアーティストの活動を比較・対照させて考察をおこなうことができた。その考察をもとに、国際シンポジウムでは、現代社会におけるアートとは何かを、さまざまなつくり手の活動の実態に焦点を当てて議論することを試みた。 今年度後半は、前半におこなったフィールドワークの成果にもとづき、博士論文の全体構想を改めて練りなおした。そして章を立てたのち、各章ごとに執筆をすすめた。先行研究史とその検討については、ロンドン大学東洋アフリカ学院でおこなった文献調査によって、十分な資料を得ることができ、その考察もおこなった。
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