研究概要 |
ジヒドロ-β-アガロフラン骨格を中心骨格に持つセスキテルペン類は、わずかな分子構造の違いによって抗多剤耐性(MDR)活性・抗ガン活性・免疫抑制活性・抗HIV活性などの異なる生物活性を示す。すなわち本骨格は多様な生物活性を合成化学的に制御しうる魅力的な化合物であるため、一般性の高い効率的合成法の確立が望まれている。本研究では、生物活性制御を視野に入れたアガロフラン骨格の新規構築法の確立を目的とする。 研究実施計画として、安価な芳香族化合物から酸化的脱芳香環化とDiels-Alder反応を鍵反応としてアガロフラン骨格を構築する合成計画を立案した。計画に従い、1,5-ジヒドロキシナフタレンから17工程で鍵反応に設定した酸化的脱芳香環化を行う化合物を合成できた。この過程で、計画通り合成初期段階に不斉1,4付加反応を組み込むことに成功し、研究計画上困難が予想された各酸素官能基導入における立体選択性の制御についても、検討の結果ほぼ完全に制御することができた。 続いて酸化的脱芳香環化について種々検討を行った結果、原料である化合物の構造を精密に調整することによって、望む四置換炭素を含むジエンを高収率で合成できた。続く二つ目の鍵反応であるDiels-Alder反応によって四級炭素の構築を達成した。さらに3工程を経てエーテル環を形成し、アガロフラン骨格の合成に成功した。 以上のように本年度の研究実施計画で設定した目標を達成した。なお本手法によるアガロフラン骨格合成は世界初の例であり、合成化学的に意義深い。
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