研究概要 |
本研究の最終的な到着点は,日本での治療共同体実践の導入にある.この最終的な到着点にむけて,本論文では2つの主要な目的を設定している.1つは,アディクション回復支援における治療共同体の発祥国であり,現在でも世界の中心的役割を担うアメリカの治療共同体実践の理論化・モデル化を行うことである.2つ目に,日本で実現可能な日本型治療共同体モデルを提示することである.治療共同体でのフィールドワークやインタビュー調査に加え,国内のリハビリテーション施設へのヒヤリング調査を実施し,日本独自の歴史的・制度的背景や,文化的側面を視野に入れ,日本型治療共同体モデルについて考察した. 日本型治療共同体モデルの課題として,マクロな側面では,財政的基盤と専門的基盤の確保,そして司法システムとの連携による介入の3点が挙げられた.そして,文化的な側面としては,治療共同体の独自の構造である階層制が日本の文化的背景から適しており導入しやすい点,そして,これらの構造と相互補完的な役割であるエンカウンター・グループの導入が重要な課題であることが挙げられた. これらの日本型治療共同体導入の重要な課題となるエンカウンター・グループの導入について,日本国内のアディクションリハビリ施設においてモデルプログラムの実践化に取り組んだ.特にモデルプログラムでは,治療共同体研究者のDe Leonが治療共同体の特徴とする以下の2点に焦点化した.1つは,「技術として場を活用する」(De Leon 2000)ことであり,2つ目は「当事者が媒介者となる」(De Leon 2000)ことである.今後の課題としては,これらの日本型治療共同体プログラムの効果についての調査に取り組むと同時に,日本型治療共同体プログラムの普及に努める.また,いくつかの治療共同体プログラムを実施する機関の組織化を試み,治療共同体の情報共有と同時に質の確保,そして,情報発信の役割を担うことを目指す.
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