研究概要 |
本年度の成果は以下の3点である.1点目は,英文言語資料を解析対象に拡大したシステムに発展させたことである.2010年~2011年にかけて,ハイチ地震を皮切りに海外を中心に甚大な被害をもたらした災害が多発している.そこで,本研究では災害・危機の言語資料を解析するシステムを英文言語資料も解析可能なシステムへと拡張を行なった,昨年度は,国連のOCHAが運営するRelief Webに掲載されている情報を対象にしたプロトタイプを開発し,本年度はそれ以降に発生した各災害の情報を対象にして,継続的な実証実験を行なった.その結果,英語を母国語としない利用者から,情報の収集と分析の負担を大幅に軽減し,適切に事態推移を把握できるツールとして高い評価を受けた,2点目は,本システムを実際の危機対応現場での利用手法を開発したことである.本システムは,時系列的に増加するドキュメント群の中から,任意の時間幅における注目すべきドキュメントを自動的に抽出する手法を有している.本年度は,この手法について,利用者が過去に経験・知識を元に選んだドキュメント群を教師コーパスとし,利用者の経験・知識を踏まえた注目すべきドキュメント抽出を行う手法を開発した.京大病院医療安全管理室の院内インシデントレポートの抽出作業において実証実験を行い,従来の手法に比べて極めて高い精度でレポート抽出できることが確認された.3点目は,時間以外をドキュメント順序の基準にした手法の応用として,自由回答解析システムを開発したことである.抽出キーワードをクラスター分析することによって自由回答群内容の内訳を明らかにしたり,典型的な自由回答を自動的に抽出することよって回答群の特徴的な傾向を明らかにする手法を開発した.以上と昨年度の成果と合わせて,言語資料から災害・危機の事態推移を迅速に把握し,将来展開の予測を支援するシステムを構築した.
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