研究概要 |
西南日本ではスラブ内地震が発生した際多くの観測点においてsP波が明瞭に観測されるため,sP波を含む波形モデリングを行うことによって,より信頼性の高い地震波速度構造モデルの構築が可能となる.昨年度は主に震源と観測点を結ぶ複数の側線を対象とした二次元地震波速度構造モデルを構築したが,本年度は三次元速度構造モデルの構築に着手した.先ず,一次元層構造モデルを用いて,sP波が広範囲で明瞭に観測された地震(2001/3/26,安芸灘,Mw5.1,深さ48km)の波形モデリングを行った.さらに,各フェイズの到達時刻が十分に再現できない観測点での再現精度を改善するため,三次元的なバリエーションを持つ速度構造モデルへのチューニングを行った.地震活動の分布やレシーバ関数解析結果を参考に速度構造を改善した結果,各サイトでのsP波および実体波の走時を良く説明することができた. また今年度は,海溝型地震の震源過程の解析にも着手した.地震動を精度良く見積もる手法の検証には,地震波速度構造モデルの構築の他に,対象とする地震の震源断層モデルの推定も同様に重要となる.1985年に発生したMs7.8のチリ地震の震源域は2010年の巨大地震(Mw8.8)の北側に位置しており,両地震の余震域は,震源域がオーバーラップしている可能性を示唆している.我々は双方の地震のアスペリティがオーバーラップしているか,それとも地震固有のものとして存在しているかの検証を行った.遠地実体波を用いた波形インバージョン法に基づき双方の地震の震源過程の解析を行った結果,1985年の地震の震源域南側に位置するアスペリティの大部分は2010年の地震断層面と重なるものの,アスペリティの位置そのものは重なっていないことを確認した.これは同一断層面におけるアスペリティ位置が繰り返し発生する地震において必ずしも一様でない可能性を示唆している.
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