●研究実施の概要:報告者は、以下の三つの軸「(1)『正義論』以前のロールズの思想の研究」「(2)伝統的な社会思想(特に社会契約論・功利主義)と彼の思想の関係の研究」「(3)ロールズのメタ倫理学上の立場「道徳的構成主義」の研究」を中心に、「ジョン・ロールズの社会正義論における功利主義批判の本来の意義の分析」に関する研究を進めた。軸(1)において、これまで注目されてこなかったロールズの博士論文に着目し、ロールズが博士論文以来「道徳的知識の探求の適切な基盤・観点」を主題としてきたこと、この視座から功利主義批判および「道徳的構成主義」を提唱したこと(軸(2)(3))を示した。また2011年1月31日より、米国イェール大学哲学科客員研究員として、上記三軸を総合した博士論文の執筆を進めた(同年6月1日まで滞在予定)。 ●本年度の研究内容:前年度の日本哲学会での個人発表「ロールズは功利主義の何を批判していたのか」(2009年5月、東京・慶応義塾大学三田キャンパス)をもとに、北海道大学文学研究科論集に論文「ロールズの功利主義批判と『人格の区分の重視』」を投稿、同論集第10巻(2010年)に収録された(軸(2)に関連)。 また、日本倫理学会(2010年10月、東京・慶応義塾大学三田キャンパス)にて、ロールズの博士論文に着目し、道徳的知識の探求という観点からロールズと功利主義の比較を試みる個人発表「R.M.ヘアのロールズ批判再考」を行った(軸(1)(2)に関連)。 最後に、北海道大学文学研究科「組織的な若手研究者等海外派遣プログラム」の支援を受け、2011年1月31日より(年度をまたぎ)同年6月1日まで、米国イェール大学哲学科客員研究員として、同学科所属のS・ダーウォル教授の指導の下、上記三軸を総合した博士論文の執筆を現在も進行中である。
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