研究課題
特別研究員奨励費
上皮-間葉転換(EMT)は上皮細胞が間葉系細胞に変化する現象であり、初期胚発生と深く関係している。接着分子ネクチンとその細胞内結合分子アファディンはEMT (Epithehal-mesenchymal transition)において重要な役割を果たしていると考えられるが、その分子機構の解明を目的として研究を行った。器官形成時に2種類の細胞が混ざり合う過程で、接着分子や細胞骨格が受けている制御を明らかにするために、ネクチン(ネクチン1、3)とともに、蛍光標識した細胞骨格分子tublinを各種細胞に導入し、スティブル細胞を作製した。また、アファディンの影響を調べるために、PDZドメイン欠損ネクチン(ネクチン1Δ、3Δ)とtublinの多重トランスフェクタントも作製した。ネクチン1もしくはネクチン3を発現したHek293細胞をセパレーターの左右それぞれに撒いて細胞シートを作製し、セパレーターを外した後で細胞シートの境界面における細胞混合の様子をライブ観察した。その結果、ネクチン1とネクチン3の組み合わせで細胞混合は見られた。ネクチン1同士、またはネクチン3同士で細胞は混ざらなかった。アファディンをノックダウンしたところ、ネクチン1とネクチン3の組み合わせでは細胞は混ざり、さらに、ネクチン1同士、ネクチン3同士でも混ざり合った。ネクチン1Δもしくはネクチン3Δをそれぞれ発現した細胞でも同様の結果が得られた。このことから、ネクチン1同士、もしくはネクチン3同士の作用が細胞の境界面を維持し、その機能をアファディンが細胞内から制御する可能性が考えられた。これらの実験から、胚発生時においてアファディンは重要な役割を果たす可能性が考えられる。このことは、初期発生時におけるネクチン-アファディン系のEMTに与える影響を議論する上で重要な知見であると考えられる。
すべて 2009
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
J.Cell Sci. 122巻
ページ: 4319-4329