研究概要 |
本研究は,ハードディスクドライブの1Tbit/inch^2を超える高記録密度化を実現するために,強磁性原子数個から構成される1nm級の強磁性ナノ接点を有する極薄の酸化物層(NOL:Nano-Oxide-Layer)を作製することで,ナノ接点中で発現するナノ狭窄磁壁型MR効果を用いた新規な次世代磁気読み取りヘッドの開発を行う.昨年度までの研究成果により,Fe_<0.5>Co_<0.5>(以下FeCo)強磁性体のバルクスピン非対称性(β)が、ハーフメタルを示すフルホイスラー合金と同程度の0.81という値を示したため、本年度はFeCoを用いたナノ接点磁壁型MR素子の開発に注力した. conductive-AFM(atomic force microscopy)によるナノ接点の直接観察により,素子面積抵抗(RA:resistance area product)が1.5Ωμm^2のサンプルにおいて,200nm×200nmの領域にナノ接点が18個,その平均直径が1.4nmであることがわかった.得られたナノ接点の個数,並びに直径は理論で示されている最適なナノ接点の形状と同等であった.しかし,このサンプルで得られたMR変化率はわずか5%程度と小さい値が得られた.申請者はこの低MR変化率の原因追究が高MR変化率の指針になると考え,FeCo内部に酸素が取り込まれた際の比抵抗の増加とβの低減について詳細に調べた.RAが1.5Ωμm^2で18個のナノ接点を有した場合,一個のナノ接点の拡散抵抗分の比抵抗は,60μΩcmと計算することができる.純FeCoの比抵抗が16.3μΩcmであることを考慮すると,作製したナノ接点の比抵抗は非常に高い値となっている.そこで人工的にFeCo内部に酸素を取り込ませたFeCoO膜を作製しそのβを求めた.純FeCoでは0.81と求められたβが,比抵抗が60μΩcm程度のFeCoO膜では0.5程度に低減していることがわかった.この結果からFeCoナノ接点中から酸素を還元させることができれば高MR変化率が得られるという指針が得られた.本研究では,還元効果として高温加熱を試み,サンプルを380℃という高温加熱を施すことで酸素の還元効果を実証し,MR変化率も二倍の10%にまで上昇させることがきた.
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