研究概要 |
地球温暖化などエネルギー消費に関する環境問題の解決には,クリーンなエネルギーの利用とエネルギーの有効利用にある。クリーンエネルギーのひとつとして,燃料電池が挙げられる。その燃料電池を様々な用途に使うために,電力の供給先が必要とする電圧値に変換する電力変換器(コンバータ)が必要である。特に,燃料電池を家庭用に用いる場合,燃料電池の直流を家庭用の交流に変換するDC-ACコンバータが必要となる。このコンバータの小形化・高効率化が燃料電池の実用化の課題である。更に,燃料電池は電流リプルが大きい場合,変換効率の低下,寿命の低下などの特性劣化を引き起こす。従って,電力変換器において,燃料電池からの入力電流リプルを低減させることが求められる。 本研究では,燃料電池用DC-ACコンバータにおいて,入力電流リプルを低減させる手法の検討を行った。報告者らは,パルスリンク方式という新しい回路方式を提案してきた。そのパルスリンク方式DC-ACコンバータにおいて,入力電流リプルを低減するための最適な回路パラメータを考察した。その結果,提案回路に挿入されている直列LC回路のインダクタンス値によって,入力電流リプルが大きく依存することを確認した。更に,インダクタンス値の小さい領域において入力電流リプルが低減することを確認し,その低減メカニズムを調べた。その結果,スイッチング周期内において,インダクタに流れる電流の時間変化が零になる電流保持モードにおいて入力電流リプルが低減することを見つけ出した。そして,電流保持モードにおける動作解析を行い,入力電流リプル低減メカニズムを示した。解析結果は実験結果と良好な一致が見られた。電流保持モードは,回路パラメータの値が小さくてよく,従来の提案手法よりも10分の1程度でよい。従って,効率を維持したまま,提案回路の更なる小形化へ改善できた。
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