研究課題
特別研究員奨励費
ヨウスコウスナメリNeophocaena asiaeorientalis asiaeorientalisは、中国揚子江流域固有の、スナメリ淡水性亜種である。近年個体数が激減しており、早急な保全管理が不可欠である。しかし、野生下における本種の基礎的な生態情報が不足していた。そこで、本研究では、中国揚子江に生息する小型鯨類スナメリに対し、生物の鳴音を録音して受動的にその存在や移動を観察する、受動的音響観察手法を応用して、地域個体群動態をモニタリングする手法を確立すること、生態学的知見を取得することの二点を目的とした。本年度は、(1)本種の発声頻度パターンを調べ、受動的音響観測における定量評価を目指すこと、(2)揚子江中流域-ボーヤン湖接続域に生息するヨウスコウスナメリに対し、曳航音響調査を実施して、資源量を推定すること、の二点に取り組んだ。動物に機材を直接装着するバイオロギング手法を適用し、発声頻度パターンを調べたところ、スナメリ15個体が10分間に発する鳴音数は0から290まで大きく変化したが、昼夜の差や概日リズムは認められなかった。体長、性別、平均遊泳速度および最大遊泳深度と発声頻度の相関関係はなく、発声頻度は非周期的で、個体差が大きかった。特定のパラメータに依存しない発声頻度は受動的音響観察に適しているが、偏差が大きいため、その解釈には注意を要すると考えられた。受動的音響観測が広く用いられるようになった一方で、これまでは受信された音数に着目していたため、対象音の発声頻度による観測バイアスを考慮した定量的な解析は、殆どおこなわれていなかった。本研究により、受動的音響観察手法で習得された音の数を定量的に評価することが可能になった。次に、揚子江中流域とポーヤン湖の接続水域においてを曳航音響調査を実施した。延べ225km調査し、ジグザグ航路で約180頭のスナメリを検出した。音響的片側検出距離を約300mと推定された。先行研究より、検出確率をおよそ56%と仮定すると、当該水域のスナメリ生息数は130頭前後と推定された。本水域に生息するスナメリの個体数密度は、先行研究で明らかになっている他の水域に比べ非常に大きいため、本水域のスナメリを指標として個体数動態を調べることが重要であると考えられた。
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Proceedings of the 7th International Symposium on SEASTAR2000 and Asian Bio-logging Science
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5th International Symposium on SEASTAR2000 and Asian Bio-logging Science
Marine Mammal Science
巻: (in press)
巻: 印刷中